多汗症について

多汗症とは
多汗症は、発汗が生理的必要以上に多くなる状態を指します。多汗症には大きく分けて全身性多汗症と局所性多汗症の2つの種類があります。
全身性多汗症とは
全身の発汗が増加する多汗症のこと。
特に原因がない特発性のものと感染症、甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫などの内分泌代謝異常、神経疾患などの理由があってそれに伴って症状が出るものに分けられます。
局所多汗症とは
体の一部に限局して発汗量が増加する多汗症のこと。
特に原因がない特発性のもの(原発性局所多汗症)と神経障害やFrey症候群(耳下腺の手術や炎症の後に生じるもの)など理由があってそれに伴って症状が出るものに分けられます。
原発性局所多汗症とは
原発性局所多汗症の診断基準
原発性局所多汗症は、頭・顔面、手のひら、足のうら、わきに暑い環境や緊張などの精神的負荷の有無いかんに関わらず、日常生活に支障をきたすほどの大量の発汗を生じる状態。局所多汗症の診断基準として以下があげられます。
原発性局所多汗症の診断基準
1)最初に症状がでるのが 25 歳以下であること
2)対称性に発汗がみられること
3)睡眠中は発汗が止まっていること
4)1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること
5)家族歴がみられること
6)それらによって日常生活に支障をきたすこと
(明らかな原因がないにもかかわらず、特定の部位で過剰な発汗が6カ月以上続き、上記の6つの症状のうち2つ以上に該当する場合)
原発性手掌多汗症とは
手のひらに特に原因なく多量の汗をかくことです。
日本における原発性手掌多汗症は、約5.33%の人に見られる症状で、平均的には13.8歳頃に発症します(男性は15.0歳、女性は11.6歳)。
特に幼い頃や思春期に発症することが多いのが特徴です。「テスト中に答案用紙がぬれてしまう」「人と握手するとき気にしてしまう」などと学習や仕事の効率が下がったり、精神的なストレスを感じたり、人間関係に影響が出ることがあります。その結果、患者さんの生活の質(QOL)が大きく低下する可能性があります。
原発性腋窩多汗症とは
両わきに特に原因なく多量の汗をかくことです。
日本における原発性腋窩多汗症は、報告によって約3.7〜5.75%(20人に1人)とされ、原発性手掌多汗症と同じく
全く珍しくない病気です。
「グレーのTシャツが着れない」「冬でも室内では汗ばんでしまう」「こまめなシャワーが必要」と日常生活に支障をきたします。
多汗症の治療法
現在多汗症の治療は保険適応で処方できる外用薬が増えてきました。
現在はわきと手のひらの多汗症で保険適応の薬があります。
発汗の仕組み
多汗症の原因となる汗はエクリン汗腺から分泌されます。エクリン汗腺は交感神経により調節されており、アセチルコリンがエクリン汗腺のムスカリン受容体サブタイプ3(M3)を刺激することにより発汗が起こります。
当院で行える治療方法
外用療法
現在三種類の多汗症の外用薬が出ていますが、いずれもエクリン汗腺に発現するムスカリン受容体にオキシブチニンが結合することで発汗シグナルを抑えて、結果汗を抑えます。
毎日の使用によって徐々に効果が感じられます。
アポハイドローション(オキシブチニン塩酸塩)
手のひらの多汗症に使用します。
エクリン汗腺に発現するムスカリン受容体にオキシブチニンが結合することで発汗シグナルを抑えて、結果汗を抑えます。


エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)
わきの多汗症に使用します。塗るタイプになります。

ラピフォートワイプ(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)
わきの多汗症に使用します。拭き取りタイプになります。

内服療法
外用療法が難しい場合、症状がコントロールできない場合に検討します。
プロバンサイン
抗コリン薬です。
神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを抑制し、汗腺への刺激を減少させることで発汗を抑えます。
緑内障、前立腺肥大、重篤な心疾患、イレウスがある方には処方できません。
口渇、便秘、排尿障害などの副作用が報告されています。